Grassetto 【Episodio 011】

スーツの歴史を語る上で外せないのが
1930~40年代頃に世の男達を席巻していた
Bold Look Suit Style
所謂、ギャングファッションに多く見られる広い肩幅、大きな襟、太いパンツ等
大胆(Bold)で力強い男っぽさを強調したスーツスタイルで、アメリカ合衆国禁酒法時代を
背景にした映画等で多く見られる。
ゴッドファーザー、アンタッチャブル、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 等を
衣装目線でチェックしてみるのは実に興味深い。
古本でアメリカのライフスタイル誌 Esquire (エスクァイア)の年代物や
ハリウッド映画黄金期の資料による男優ファッションは
現代のアパレル業界の最良のお手本なのは間違いないだろう。
かく言う私も銀幕のケーリー・グラントやクラーク・ゲーブルの
演技中の見事な着こなしや所作からインスパイアを大いに受けている。
Bold Look Style 全てが暴力的な装いかと言うとそうでもなく
色男をよりエレガントに魅せるドレープ感は大変美しく
仕立ての工夫もより高い技術力が要求されるから
スーツの歴史史上最も付加価値の高い部類に属するのではなかろうか。
1990年代のバブル期、世の中ソフトスーツだらけになっていた頃
私の所属していたアパレルメーカーのトラディショナルデザイナー精鋭達が
ソフトスーツとは一線を画す、最もハードな Bold Look Suit 制作に着手した。
1940年頃の Esquire (エスクァイア)からイメージでデザインを起こし
仕上がった本格的 Bold Look の Suit がこちら↓
上衣は
広い肩幅
大きなシングルピークドラペル
打合いには高い位置の2釦
大型のスリーパッチポケット
袖口は本メスの3釦
背中心にはインバーテッドプリーツ
腰位置はタックとギャザーで寄せ
太いバックベルト・・・
このバックシャンと呼ばれる
凝った後ろ姿こそが
「漢は背中がモノを言う。」って感じの装飾。
下衣は
フロント釦での開閉式
大きなフラップの懐中時計用ポケット
ベルトループは無く胸骨にも達するハイウエスト
深いV字割りのマーベルト
本格的にブレイシーズで吊る仕様
圧巻なのは
渡り幅40cm以上
裾幅30cm以上
ダブルの折り返し幅は5.5cm
深い2プリーツ
サイドアジャスター付き
そして、もう一着は
上衣
フォーマルシーンでも違和感のないブラック無地
フロント3釦のシングルピークドラペル
3釦だがこれの最上段は掛けない中一つ掛け
腰ポケットはフラップ付きスラント
背中はプレーンな仕様でベント無し
下衣
仕様はハウンドトゥースのと同じ
但し、こちらの生地・・・
ビックリする程、分厚い
そして重い
軽薄短小とは真逆
何たる気合の込められた優美なスーツ何だろう。
制作から30年以上経過にているが二点共、現役としてバリバリ。
今年、最近ReSARTO店頭で着用中の画像①
画像②
画像③
画像④
画像⑤ この画像は10年位前の着用時。
画像⑥ 同上
以前、紹介した拘りの IVY LEAGUE MODEL SUIT は
この Bold Look Suit のアンチとして世に出てきているから
紳士スーツの移り代わりはアル・カポネの1930年代からIVYの1960年代位が
エキサイティングで面白いなあと感じるよ。
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